01.君といる一秒の長さ
しょうくんは優しい。
底なく優しい。
だから、甘えてしまうんだ、知らないうちに。
「ね、もう…別れ、たい」
引き止めてくれる、好きだから別れないで、って。
きっと、そう言ってくれるものだと、信じてた。
でも。
「分かった。幸せになって」
暖かい掌が頭撫でて、車のキーを持って、俺の横を通り過ぎていく。
呆然としている俺の後ろで、ドアがばたんと閉まった。
優しさ、ってなんだろう。
しょうくんは、俺の言う事なら全部聞いてくれた。
どんなに忙しくたって、寝る暇もないはずなのに、連絡してくれて。
仕事のフォローだって、すかさずしょうくんがしてくれた。
好きだよって、何度も囁いてくれたし、俺の嫌がる事は絶対にしない。
当たり前になりすぎて、好きって気持ちが分からなくなって。
確かめようとした結果、が、これ。
「優しすぎるんだよ、ばか」
涙が溢れてくる。目の前が、見えなくなるくらいに。
ねぇ、涙を止めてよ。
いつものように。
帰ってきて。
抱きしめてよ。
泣かないでって。
どれだけ、好きだったか、を気づかされる。
でも、もう戻れない。
優しさに溺れるまえに。
1秒ってこんなに長いんだね
(さよなら)
追伸
初お題!
しょうちゃんって、本当優しい男だと思って、ずっと暖めておいたお話。
甘い感じに書くつもりだったけど、ちょっと悲恋にしてみました。
この二人、ちょっと切ないくらいが似合う気がする!どうでしょうーか。
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