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サイフォン
あら/しおんりーですよ! 小説がありますが、実在の人物様とは関係ない!という事になっております。ご了承ください。
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今回は、ちょっとお姉ちゃんに対するなるせせんせいの気持ちを書いて見ました。


そしたら、案の定長くなったので2部に分けてます。

注意書きはいつものとおりです。(省略!


ドラマのおーのくんの涙は最強です。

よし!


↓ドウゾー




「姉さん」に会ったのはいつの頃だったろうか。

りょうは、いつも姉さんの話をしてた。
「今日も会いに行く」、「昔姉さんは…」

姉さん、姉さんって。
両親をなくした痛みはお互い一緒だった。
けど、兄弟を無くした痛みは、僕にしかない。

兄弟話なら、僕だってあった。
それこそ、自慢の弟、なのだから。
けれど、無闇にひでおの話をするのは億劫で。
りょうの話を、いつも頷いて聞いてる側に徹した。

ある日。
りょうが姉さんに、僕を紹介したいといった。
特に何もなかった僕は、病院についていった。

施設はとても静かで清潔だ。
泥に塗れたような僕には、酷く場違いのようだった。

「ねえさん」

りょうが彼女を呼んだ。
真っ白なシフォンのワンピースに包まれた姿は、彼女の雰囲気にぴったりで。
車椅子で、海を見つめていた彼女に、僕は目を奪われた。

「りょう」

声に気付いたのか、僕らの方向に顔を向けてきた。
その顔は穏やかだったが、その目に映るのは闇でしかなかった。

聞いてはいたが、彼女は全盲だった。

「ねえさん、連れてきてやったよ。いつも言ってた、ともお」
「ほんとう?はじめまして、姉のまきこです」

僕の居場所が掴めていないのだろう、りょうの声を頼りに僕の方に頭を下げた。


「…はじめまして…まなかともおです」

その出会いが、まなかともおとしての「ねえさん」との最後だった。



それからりょうが事故で亡くなって、なるせりょうとして初めて病院に向かった。
もう会えないと告げにきた。頻繁に会えば、必ずりょうじゃないというぼろが出る。
今日ここに訪れたのは、ただのりょうは生きてるという証人にするためだった。

いつものバルコニー。
あの始めてあったときと変わらず、白を身に纏い、遠い目で海を眺めていた。

「…姉さん」

果たして、りょうのように呼べたのだろうか。
戸惑いながら、彼女の方へと近づいた。

「りょう?」

心底嬉しそうな顔だった。
僕の顔を捜すように、手が彷徨った。
彼女の手を取り、頬に当てた。

「ここだよ」

気付かれないのだろうか。
人は一つの感覚をなくすと、それを補うように他の感覚が冴える。
触覚が冴えてあるだろう、彼女に悟られるのではないかと不安に駆られた。
柔らかい彼女の手を感じながら、そっと離す。
けれどその手が僕の手を離さなかった。

「りょう、少し疲れてるんじゃない?ともおくん、亡くなってから…」

僕は死んだと話してある。
ずんと胸の奥が痛い。まだこの頃は、復讐心より罪の意識が重かった。

「大丈夫だよ、心配しないで、ねえさん」
「りょうは,小さい時から泣き虫なんだから、夜な夜な泣いてるんじゃない?」
「…からかわないでよ。もう小さくないよ。それより、もう帰らなきゃ…」

悪戯気に笑っていた彼女の顔が曇る。
こんな牢獄のような生活。
彼女の支えはりょうでしかない。

「そうね、りょうは勉強頑張らなきゃ」

ずっと握っていた手を、ゆっくりと離した。
微笑んでいたが、やっぱりその顔は酷く寂しそうで。

「また、今度来るから」

こんな事、言う筈じゃなかった。
今日でこれっきりにするはずだったのだから。

「約束よ、また会いに来て」

僕に見せたその笑顔に息を呑んだ。



その笑顔が忘れられずにいた僕は、半年に一回、一ヶ月に一回、一週間に一回と頻度を増した。
徐々に、なるせりょうとして形もなってきて、自分に自信がついていったからかもしれない。
しかし、会う事は復讐のための道具として用いるための準備、の過程ではなかった。
復讐のために、どんなに醜い自分になっても、彼女を見れば洗われたから。

僕の復讐を支えたのは、皮肉にも姉さんのおかげだったのかもしれない。



そして、悲しい運命の日が巡ってきた。
いつものように電話が掛かる。

姉さんは携帯を使えるようになってから、頻繁に電話が掛かってくる。
会えない日以外でも、こうして声を聞けるのがよほど嬉しいらしい。


「本当に分からないの?」
「なんだっけ…?」

彼女の質問はいつも唐突だ。
思い出話だったり、ただのTVの話だったり。
辻褄あわせにいつも背中が凍る。

「もう、今日はあなたの誕生日でしょう?」

呆れた声が電話越しから聞こえる。
彼女は僕をからかうのが好きみたいで、今もくすくすと笑っている。
今日もあの笑顔に会える。
本当の自分の誕生日ではなくとも、幸せそうに笑ってくれるだろう。
電話を切って、僕は病院へと急いだ。


そのとき、僕と姉さんを引き裂く郵便物が届いたことも知らずに。



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こちらは、山が上、下に置く風なグループのお兄さんたちと同姓同名だったり、え!職業も性格も似てね^^?って言う方々がちょっとだけいちゃいちゃしてたりしてます。いわゆる、ビィエルゥな小説を置いているサイトでありブログです。
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