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サイフォン
あら/しおんりーですよ! 小説がありますが、実在の人物様とは関係ない!という事になっております。ご了承ください。
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今回も頂いたネタからです!



暗いかなー…と思わせぶりなSSになった、と思います。
そして、こっそりまおーDVD発売記念に乗っかれたと喜んでいる自分が、痛いです^^
そんな私はほっといてもらって!



※私の趣味で「なるせりょう」のまんまです…!ともお、許してくれ…!



さてさて、本編ドウゾー













目を開いたら、白の世界だった。
天国なのだろうか、とただぼんやりと輪郭のない世界を見つめる。

清潔なシーツの香りと消毒液の香り。
ここが病院だという事に、ようやく気づいた。


僕は生きてしまっている。
どうして、神様は僕を死なせてくれなかったのだろうか。
腹の痛みが、じわりと伝わってくる。

これから、生きる、という地獄を味わう事が、僕の贖罪というわけか。
愛してしまった人を、自らの手で殺してしまった事に苛まれながら。


罪を背負い、穢れがなかった瞳を愛してしまったのに。
長年の月日を経て、生み出した憎しみは留まることはなくて。
愛しさと憎しみが入り混じって、たどり着いた結果が僕を殺してもらう事だった。
愛する者に復讐という名で殺される、それが僕の最高の終焉じゃないかと。

その願いは叶うことは、なくなった。
僕は死にたかったのに、あの人の手で。


けれどあの人は、きっともういない。



「なるせさん!目が覚めたんですね?」


百合の花を抱え、彼女は大きな目をさらに大きく見開いて嬉しそうに笑った。
体が重く、視線だけを動かした。


「良かった…、発見がもう少し遅れてたら…なるせさん…っ…」


泣きそうな顔で、僕を見ないで。
その涙は、拭えないのだから。
僕の思いを感じ取ってくれたのかは分からないけれど、彼女は気丈にも涙を堪え、笑顔を見せてくれた。


「そうだ、刑事さんも隣にいらっしゃるんですよ。刑事さんは昨日、目が覚めて…。あ、今は寝てるみたいなんですけど…」



生きている。
彼女が生き生きとソラの様子などを話してくれているのだが、全く頭に入ってこなかった。
このカーテンの向こうにあの人が居る、その事ばかりが張り付いて離れない。


「あ、そろそろ仕事に戻らなくちゃ…それじゃ失礼しますね」
「…あ、…りがとう…」


ようやく出せた言葉で、手を振り微笑む彼女を見送った。
その視線をカーテンに移す。
すると、小さくカーテンが揺れた。


「なるせさん…」


彼の声だった。
どうしてだろうか、声を聞いただけで視界が滲む。
安心感にも似た感情が、溢れて止まらない。
上手く声が出なくて、返事が出来ない自分を悔んだ。


「…俺…、生きてました。…助かりたくなかった、生きる資格なんてないのに…」


すみません、と小さく呟く声に、胸が押しつぶされそうだった。
追い詰める事を望んでいたはずなのに。
この胸の痛みが、恋だと分かっていて気づかぬ振りをし続けている。
けれど愛しさは、もう溢れてしまった。




伝えたい。





「…せりざわ…さん」


息を飲み込み、絶え絶えに声を発する。
深く息を吐いて、少しだけ動く指先をシーツに絡ませた。


「…赦してください…」
「な…るせさん…」
「そして…あなたを愛してしまった…事も」


神に懺悔のように目を瞑ると、また一筋涙が零れる。
静かな病室には、時計の針の音だけが、響く。
その間に、シーツが擦れる音とペタペタと歩く床の音。
カーテンがそっと開くと、腹を押さえたままの彼の姿があった。
動けないはず、なのに。
ベットに近づいてきて、彼は力尽きるようにベットに倒れこんでくる。
それは、僕の顔の横に。


「だい、じょうぶですか…?」
「はい、…なるせ…さんに、触れたくて…来ちゃいました…」


本当に表情に素直な人だ。
伸ばしてきた指が、流れた涙の筋を拭き取ってくれた。
温かさが頬に伝わって、どうにか動かした手でその手を掴んで、頬擦りする。
そっと見上げれば、優しげに細められた瞳と絡む。


「俺も…あなたを愛しても…良いですか」


愛する事の意味を、愛される事の意味を、僕は未だ知らない。
それでも、これが愛なのだと感じることは出来る。
小さく頷けば、微笑む顔があった。




*****



そして。
退院をして2ヶ月ほど経ったある日。
せみの鳴き声はとうに消え、日も短くなり肌寒くなってきた頃だった。











僕となおとは、街が見渡せる坂の上にあるひでおたちの墓前に向かっていた。
あの角を曲がれば、ひでおたちが眠る場所。
一歩一歩近づくたびに怖くなった。
赦してもらえるのだろうか、と。


「…りょう…?」

立ちすくむ僕を、なおとは優しく肩を抱きしめてくれた。


「ダメだよ、りょう…もう自分を責めないって約束しただろ」
「…ごめんなさい」

俯く僕を、なおとは責めはしない。
なおともきっと、怖いのだ。
同じ気持ちだと、肩から伝わる静かな震えが感じられた。
暫くして、再び歩き出す。
墓前の前に立つと、枯れた百合の花が時間の経過を語っていた。


「ここが、ははとひでおのお墓です」


小さく呟いた僕の声に、なおとが頷いた。
名も刻まれていないのを、問われる事は無かった。

綺麗になった墓を前に、僕たちはゆっくりと手を合わせた。



母さん、ひでお…僕を赦してくれるだろうか。
そっちに逝けなかったことも、ここに来るのを躊躇った事を。



ゆっくりと目を開くと、百合の香りが優しく包んでくれる。
幸せだったあの頃のように、柔らかに。
初めてかもしれない、こうして墓前に立ち暖かな気持ちになれることは。







ようやく、僕が僕に還れた。



目を閉じると、涙が一筋流れる。
初めて、悲しみではなく喜びで涙が溢れた。
すると、抱かれた肩の温かみを感じる。



生きる事は、悪い事。
けれど、皆生きている。
幸せ、という罪を背負いながら。







柔らかな日差しは緩やかに影を落とし。
あの日絶望しかなかった街の景色に、暖かな灯が灯り始めていた。










*************

追伸
ネタから頂きました~(ゆーじさま、有難うございました!)
久々に題名悩んだ…!な感じのまおーですが!!やっほ!(無駄にテンションたけーな…)

こうやって、二人で支え合って生きてて欲しかった…な。
死ぬ事が美学ではないぞ、と。(急にテンション下がったな)


何はともあれ、DVD]は無いのですが…がっつりと溜め込んだまおーをもう一回…観たいな、と思いました。
でも、観れないんだよなー…辛すぎて。
多分、一話の「なるせ りょうです」辺りで号泣しそうだから…^^
早すぎるだろ、それ^^






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有難う御座います!><
ぐあぁぁぁ!!あんな無茶なお題に応えて下さって有難う御座います!!
ちょうど昨日全話見返したばかりで、もう、なんていうか…(涙が止まらない)こうして二人で生きて欲しかったですね;;あの最期の瞬間二人は分かり合えたと信じたい。変わり行く季節を彼らと共に感じたかった…。
共に生きることを選んだ二人は誰よりも強い絆で結ばれると思います。「僕が僕に還れた」と墓前の前で温かな涙を流す先生には胸が締め付けられました…。そしてその隣には…。私にとってこんな幸せな景色はありません。
素敵な小説有難う御座いました。直領ワールド更に広がりましたよ(笑)

DVD、私は一気に見たのですが1話目から泣きっぱなしです;特に後半7話以降は誰か泣くたびに私も泣いてました(=ほとんど泣きっぱなし)そしてホントに消えてしまうんじゃないかってくらいの儚げな先生の美しさにも涙溢れました…。特典映像にはクライマックスシーン後の二人の様子もありました。寄り添って静かに会話をする二人に直人と先生を重ねてまたまた涙です。機会があれば是非見てやって下さい!
ゆーじ 2009/01/13(Tue)21:58:48 編集
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初めに
こちらは、山が上、下に置く風なグループのお兄さんたちと同姓同名だったり、え!職業も性格も似てね^^?って言う方々がちょっとだけいちゃいちゃしてたりしてます。いわゆる、ビィエルゥな小説を置いているサイトでありブログです。
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